鼻だけマスク
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鼻だけマスク

蒸れない 快適 マスク
熱がこもらないマスク

店内にクスクス笑いが起こる。
客たちはちらちらと1人の
青年に視線を送っている。

とあるレストランの光景。

人々の注目の的になっている、
その青年は、何人かの仲間たちとパスタを食べていた。
鼻に、布の帯のようなもの、
眼帯、といっていいだろうか、
そのようなものを装着したまま。

「ねぇ、やっぱり
その『鼻だけマスク』、変だよ・・・」
仲間の一人が声をかける。

「いーや、未来ではこれが当たり前なんだってば」
パスタをすすっていた青年がそう答える。

「本当に未来から来たってまだ信じられないんだけど・・・」
別の仲間がそう呟く。

「本当だって。証拠見せたろ。
タイムマシンが開発されて、
時空を超えられるようになったんだって。
俺は20XX年から来たし、
この『鼻だけマスク』は
世の中のスタンダードになってるんだってば」
パスタの青年はさらりとそう言う。

「まぁ、この時代にはまだマスクは鼻も口も両方
覆うものが主流だってのは知ってたけどさ、
これ、本当に便利なんだぞ?いっぺん試してみたらいいのに・・・」
青年はそう続けて、またパスタをすすった。

「何がそんなに良いわけ?」
仲間のひとり。

「んー?まず、こうやってマスクしたまま食事ができる。
あと、タバコも吸える。花粉が飛んでいる時期に外食すると、
くしゃみや鼻水が出る時とかあるだろ?」

「たしかに・・・」

「そういう時には、鼻だけマスクに限る!それに、
ほら、女性は口紅も気にしなくて良い

し。最近は『私は風邪じゃなくて花粉ですよ』って
アピールするために鼻だけマスクをつけてる人も増えてるかな。
別に口まで守る必要がないのに、わざわざ口まで覆うのはアホらしいからなぁ・・・」

そこまで聞いて、青年と一緒にテーブルを囲んでいた仲間の一人が
「僕、本当に酷い花粉症で、
強い薬飲まないと外食もできないぐらいなんだけど、
鼻だけマスクを使えば、
食事しながらマスクもできるんだよね・・・
ちょっと使いたいかも・・・」
と言い出した。

「お、いいねぇ。そういえば、
ちょうど今くらいの時代に、
岐阜にあるWAKASUGIって家族経営のメーカーで、
鼻だけマスクが開発されたような気がする。
うん、確か、そう習った。
もう出回ってるんじゃないかな」
鼻だけマスクのパスタ青年がそう言ったので、
仲間たちは次々にスマートフォンで検索し始めた。

「あった!これかな」
一人が見つけて、青年が「それそれ!」と答えた。

こうして、未来から来たという不思議な青年が言う
「未来の当たり前『鼻だけマスク』」
を後の日本に広める事になる先駆者たちが、
今日もまた誕生したのだった。